コーヒー豆知識
コーヒーの歴史

コーヒーの歴史

コーヒーが世界のあちこちに根を下ろすことができた背景には、 その時代にあった様々な政策や経済事情が複雑に絡んでいたんです。

毎日、世界中で飲まれているコーヒー。
多くの国の人々にとって身近なこの飲みものは、いつどこで生まれ、どのように人々の生活に浸透していったのでしょうか。ここでは、そんなコーヒーの歴史をちょっと紹介してみたいと思います。

コーヒーの生まれと、世界への広がり  

コーヒーが生まれたのは、東アフリカに位置するエチオピア。
国土のほとんどを高原地帯が占めるこの国は、古くから赤い実をつける木が多く自生していましたが、その実がもつ不思議な覚醒作用が発見されたのは13世紀ごろでした。
発見からしばらくの間は、その覚醒作用のために、宗教儀式に用いる“秘薬” として扱われていたコーヒーですが、16世紀にイスラム圏に渡ると、徐々に日常の “飲みもの”として広まっていきます。
宗教でお酒を禁じられているイスラム教徒にとって、ちょうど良い嗜好品となったことも、中東にコーヒーが根付いた要因の1つだったのかもしれません。
コーヒーがヨーロッパへ伝えられたのは、16世紀も終わりごろ。
キリスト教徒の多いヨーロッパ人にとって、イスラム圏からやってきた「異教徒の悪魔の飲みもの」は当初こそ敬遠されましたが、その優美な香りは徐々に人々を虜にし、長い年月をかけてヨーロッパ全体に浸透していったようです。
18世紀も半ばに入り、ヨーロッパの大国がアジアや中南米での植民地活動を押し進めはじめると、その流れでコーヒーの苗木がアジアや中南米の国々に持ちこまれ、コーヒー栽培地も世界中に広がっていきました。
こうしてみると、日本でコーヒー栽培が根づかなかった理由は、気候や土壌の問題だけでなく、アジアの中で日本はタイと並んで植民地化されなかったという歴史的背景があったことが分かりますね。

近代化と共に進んだニッポンのコーヒー文化

喫茶店のコーヒーセット
日本に最初にコーヒーが伝わったのは、鎖国政策の真っ只中にあった江戸時代初期。
一部の国との交易が許されていた長崎の出島に持ち込まれたのが最初の記録のようです。
当時それを口にできたのは一部の役人や遊女たちでしたが、不慣れなその香りや苦味は受け入れられず、コーヒーがそのまま広まることはありませんでした。
日本でコーヒーというものが広がりをみせるようになったのは、文明開化の明治時代。
コーヒーを提供する喫茶店が登場したのがキッカケでした。なにやらハイカラな飲み物を出すオシャレなその場所は、上流階級の人々や文化人の心を鷲掴みにし、当時たいへんな人気を博しましたが、庶民にとってはまだまだ敷居の高い場所。
一般大衆の間で「喫茶店でコーヒーを飲む」文化が根づきはじめるのは、もう少しあとのことです。
時代が昭和になり、第2次世界大戦が開戦すると、コーヒーは"敵国のもの"。
これまで着実に伸びていた日本のコーヒー文化は、一度姿を消してしまいます。
しかし、終戦後に高度成長期を迎えると、庶民が気軽に行ける喫茶店が次々とオープンし、さらにはインスタントコーヒーなるものまでが登場したことで、コーヒーは日本人の日常にしっかりと定着していったのでした。
東アフリカの片隅で、小さくはじまったコーヒー文化。
そこから数世紀をかけ、コーヒーが世界のあちこちに根を下ろすことができた背景には、その時代にあった様々な政策や経済事情が複雑に絡んでいたんですね。
普段なんとはなしに飲んでいるコーヒーも、こういった歴史的背景を知れば、また違った味わい深さを感じられて面白いのかもしれません。
 
written by :   Nobuhiro Yuge
他の記事も読む